大腸がんと漢方薬| 免疫力を高めて癌(治療)に負けないからだづくり
大腸がんは早期ならば完治の可能性は高い
がんと言えば死を意識してしまいますが、大腸がんは胃がん同様に早期発見、早期治療が施されれば予後が良いがんです。専門医などから正しい情報を得てがんを克服しましょう。以下に大腸がんの発生、診断、治療、漢方薬などについて記します。
大腸の働き
誰しもがご存じのように大腸は小腸から送られてきた食べ物のカスから水分を吸収し老、廃物を便にする器官です。長さは人種と言うより個人差があり、1.5mから2m程です。
大腸= 盲腸 + 上行結腸 + 横行結腸 +下 行結腸 + S状結腸 + 直腸S状部 + 直腸
上行結腸を通過する内容物は液状に近いですが、徐々に水分が吸収され固まりになります。最初の盲腸と最後の直腸は溜められるように太めになっています。直腸に便が溜まるとその刺激が脳に伝えられ反射的に排便が促されます。実際は肛門の括約筋により押し出されます。
大腸がんが急増、女性は結腸がんが多い
肺がんとともに患者数が増えているのが大腸がんです。一般的には肛門に近い直腸に多く発生します。ところが女性の場合は結腸がんが多くなっています。また気になる原因はについて現在のところはっきりと確定はされていませんが、食生活の欧米化、つまり穀物や野菜から動物性タンパク質を中心とした食事の変化が指摘されています。また食物繊維の摂取量も十分でないことが挙げられています。
大腸がんの発生はどのように・・・
- ポリープからがん化する・・・大腸の内視鏡検査でポリープが見つかり切除した話はよく店頭でも聞きますが、本来は良性の腫瘍であるポリープががん化する可能性があるからでする勿論すべてのポリープが癌になるわけではありませんが、1㎝を超えるものはがん化し易いことがわかっています。
- 大腸の粘膜細胞からがんが発生する・・・大腸表面の粘膜から直接発生します。最初ホリープのように隆起しないため内視鏡で発見されにくいと言われています。
大腸がんの自覚症状
- 血便、下血・・・大腸粘膜にはたくさんの毛細血管が張り巡らされておりますが、癌細胞が粘膜の血管を破り出血し血便、下血ひいては貧血になることがあります。がんができる部位により鮮血であったりしますが、小腸に近い右側(上行結腸)の場合は目で見ても確認は難しいです。
- 下痢、便秘などの便通異常・・・これまで快便だったのに急に便秘や下痢が何日も続いたり下痢と便秘を繰り返す場合は注意が必要になります。
- 残便感、便が細い・・・癌細胞が大腸の内側を塞ぎ便が細くなったり、便が出ても残った感があったり、便意を感じても出ないことがあったりします。日頃より排便後、便の状態を確認することが大切です。
大腸がんの検査
◎便潜血検査・・・一般的な健康診断の項目にある検査で、便に血液が潜んでいるかを確認するものです。この便潜血検査は大腸がん発見の基本です。
◎注腸造影検査・・・肛門からバリウムと空気を入れてX線で大腸がんの様子を確認します。
◎大腸内視鏡検査・・・内視鏡を肛門から挿入して直接大腸の異常の有無を確認します。ポリープなどがあったときは組織を採取してがん細胞であるか否かを病理検査で詳しく調べます。
大腸がんの治療
◎内視鏡治療・・・早期の大腸がん(0期、Ⅰ期)でなされる治療法で、内視鏡的ポリペクトミーやEMR、ESDという方法が有名です。
◎手術・・・大腸がんの基本となるのが手術です。開腹手術と腹腔鏡手術があります。
◎放射線治療・・・手術の補助として術前、術後に行われています。また骨盤への転移や他臓器への浸潤により切除が困難な場合にも行われることがあります。
◎抗がん剤治療・・・抗がん剤にはがんの進行を抑えたり、死滅させる働きが期待されます。また同時に吐気や食欲不振、倦怠感、脱毛、口内炎などの副作用の可能性もあります。
◎緩和ケア・・・がん患者さんはがんそのものの苦しみはさることながら、他の身体的、精神的ストレスは半端ではありません。進行がんから初期のがん患者さんまで家族を含めたトータルなサポートが欠かせません。緩和ケア中の方で漢方薬を利用される方も多くおられます。
大腸がんの再発、転移
再発には以下の3つがあります。
◎局所再発・・・目に見えるがんを手術で切除しても、周辺に合った小さながんが大きくなり再発する場合があります。
◎転移再発・・・リンパ節や骨、肝臓、脳など離れた臓器へ転移、再発する場合があります。
◎腹膜再発・・・お腹を覆う腹膜へ転移する場合があります。
漢方薬で免疫力をアップ、術後の回復のために
術前、術後あらゆる状況に応じて漢方薬をお飲み頂けます。たとえば手術で結腸や直腸を切除した場合下痢や便秘の合併症に悩まされるケースがあります。通常は数週間で普通便に戻りますが、下痢が数ヵ月と長く場合もあります。また大腸の動きが悪い為に便秘から腸閉塞(イレウス)になることも考えられます。便秘や下痢、ガスやお腹が張るなどの症状に漢方薬がおすすめです。
大建中湯・・・蜀椒、人参、乾姜、膠飴の4種類の生薬からなる漢方処方です。蜀椒と乾姜がお腹の冷えを温め停滞している気を巡らします。勿論人参も温めますが膠飴とともに胃腸の消化吸収を促し、体力を回復させます。他にも状態や体質に合わせた漢方薬が様々あります。お悩みの方はご相談ください。
ストーマでQOLアップ
ストーマ(stoma)とは孔(あな)の意味ですが人工肛門とは言わずにストーマと言っています。
手術後の食事は慎重に
手術後、病院では重湯から始まり3分がゆ、5分がゆ、7分がゆ、全粥とお米の比率を増やして消化管を慣らしていきます。2か月位は一回の食事量は腹七分位に抑えゆっくりとよく噛んで食べることが大切です。
・積極的に取るべき食品・・・お粥、うどん、豆腐、繊維の少ない野菜、カレイや鮭や鶏のささ身、豚肉の赤味、レバー
・避けた方がよい食品・・・ラーメン、海藻類、タコ、イカ、ごぼう、さつま芋、アルコール、炭酸飲料、カレー、唐辛子、赤飯、玄米、全粒粉のパン
また近年、安全に早期回復を目標にERAS(Enhanced Recovery After Surgery)と言って術後回復強化が提唱されています。
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