肝がんと漢方薬| 免疫力を高めて癌(治療)に負けないからだづくり
肝臓の働き
肝臓は人間の体内でもっとも大きな臓器で、およそ1キロから1.5キロになります。生命維持にはなくてはならない以下の働きを担っております。
- 代謝・・・食事により糖質、タンパク質、脂質などが摂取されますが、胃腸でそれぞれブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸・グリセロールに消化分解され、肝臓へ入るとブドウ糖はグリコーゲンへ、アミノ酸はアルブミンなどのタンパク質へ、脂肪酸・グリセロールからはコレステロールが合成されます。これらの生成は肝臓の代謝の働きによるものです。
- 解毒・排泄・・・私たちは日頃からだに必要なものだけを取り込んでいるわけだはありません。細菌やアルコール、ニコチンや食品添加物、化学薬品、体内で発生するアンモニアなどの有害物質を無毒化しているのは肝臓なのです。例えばアルコールはアセトアルデヒドそして酢酸、最終的に水と炭酸となり排泄されます。
- 貯蔵・・・肝臓に蓄えられている栄養素としてグリコーゲンをはじめビタミン、ミネラルがあります。グリコーゲンは必要に応じてブドウ糖に分解され供給されます。また血液も豊富に蓄えられており、出血などいざと言う時に供給体制にあります。東洋医学でも『肝は血を蔵す』と言われています。
- 胆汁の生成・・・肝臓は一日500cc~800ccの胆汁を生成し、胆嚢で濃縮され胆管を経由して十二指腸に分泌されます。胆汁は胆汁酸、ビリルビン、コレステロールを含んでおり脂肪の消化吸収に欠かせません。
肝がんはどうして・・・
厚生労働省によると日本人の死因のトップはがん(悪性新生物)そして2位は心臓疾患、3位が脳血管疾患となっております。年間で30万人以上の方がががんでなくなっており、肝がんの死亡者数を見てみると3万人以上となっています。その発生要因として以下が指摘されています。
- 肝炎ウイルスの感染・・・肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型、G型、TT型と7種類ありますが肝がんを引き起こすウイルスはB型、C型の2種類です。B型肝炎ウイルスは血液や体液(精液、膣分泌液、乳汁など)を介して感染します。一方C型肝炎ウイルスは輸血を介しての感染が考えられます。
- 飲酒を常習している・・・アルコールを持続的にしかも大量に飲酒することによりアルコール性肝障害を起こすことは知られていますが、さらに深刻化しアルコール性肝硬変となり肝がんになるケースもあり注意が必要です。またB型、C型の肝炎ウイルスを合併していることも多くあります。
- 糖尿病や高血圧などメタボリックシンドローム・・・B型、C型の肝炎ウイルスが陰性であっても肝がんになる方が出ています。糖尿病や高血圧などのメタボリックの要素を持っている人が肝がんになることもわかっています。
肝がんの症状
- 初期症状・・・『沈黙の臓器』と言われている肝臓ですが、ある程度状態にならなければ際立った自覚症状はありません。それゆえに肝炎ウイルスに感染している方や肝硬変を指摘されている方は定期的な検査が欠かせません。
- 腹水、黄疸、くも状血管腫など・・・肝臓の機能が低下するとビリルビンが胆汁色素になることが出来なくなり血中濃度が上がります。またアルブミンの生成も出来なくなりますので、血管内に水分を保有することができなくなり浮腫み、腹水の原因になります。また血管拡張の働きのあるエストロゲンの処理もできないことからくも状に毛細血管が浮き上がります。
肝がんの検査
- 腫瘍マーカー・・・肝臓がんの腫瘍マーカーとして一般的なものとしてAFPとPIVKA-Ⅱがあげられます。いずれも肝臓がんの細胞から血液中に放出されるタンパク質です。
- 画像検査・・・CT検査、MRI検査、腹部造影超音波検査で確認しその次の段階として血管造影検査があります。
- 肝生検・・・肝臓に直接針をさして細胞を採取し顕微鏡で確認することによりがんであるか否か100確認が可能です。
肝がんの治療
◎手術・・・肝がんの治療で第一に考えられるのが肝臓切除術です。出来るだけ患部を大きく切除したいところですが、大きく切除することにより肝不全になることもあるため門脈の領域を考えながら切除します。肝がんの場合リンパ節に転移するのはまれです。
◎分子標的治療薬、◎放射線療法、◎ラジオ波焼灼療法、◎マイクロ波凝固療法、◎経皮的エタノール注入療法、冠動脈塞栓療法
腹水、胸水などに漢方薬
肝硬変や肝がんの症状に腹水、胸水があります。肝機能が低下し血液中の水分量を調節しているアルブミンが減少し、血管内に水分を保有することが出来ず、お腹や胸に水が溜まるのです。また小腸からの栄養を肝臓に運ぶ門脈もがんにより圧迫され血流が停滞するのも原因の一つになります。大変重い状態ですが、漢方薬で少しでも血液の滞りを解消しお腹に溜まった水を血管へ引き込むことにより楽に過ごせることを期待いたします。
肝がんと養生
肝がんだけでなく肝炎を患っている患者さん一般に言えることですが、肝臓の代謝に負担となる飲酒や暴飲暴食は避け、良質のたんぱく質をバランスよく摂取することが組織の再生につながります。また睡眠不足、過労を避けて規則正しい生活が大切です。疲れを感じた時はからだを横にすることにより肝臓の血流量が増え楽になります。
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